育児をしている当事者の親と、それを見守る立場の祖父母では、子供の叱り方にも違いがあると思います。
多くの場合では、厳しく子供を育てようとする親VS可愛くて甘やかす祖父母の構図になるのではないでしょうか。
それがベースにあるので、親が子供を叱る様子を見ると「厳し過ぎる」とか「孫がかわいそう」という気持ちになってしまう祖父母が多いのです。
あるお悩みを目にしました。
3人のお子さんを育てている母親が、真ん中の子供が宿題をしないまま遊びに出ようとしたので、先に宿題を済ませるように言いました。
その言い方が厳し過ぎると言って、同居している姑が泣き出したというのです。
母親は、真ん中の子供の性格がのんびりしていてマイペースなので、つい「早くしなさい」とか「さっさとやりなさい」と急かす言葉を言ってしまうのを自覚しています。
上の子はしっかりした性格で、言われなくても自分でするので、あまり叱った記憶もないのです。
上の子と比べて、真ん中の子に対して厳し過ぎるのがかわいそうになると姑に泣かれたわけです。
このようなお悩みに対して、どう考えればいいのでしょうか。
しつけが厳し過ぎると感じる祖父母の心情
親が孫を厳しく叱るのを平然と見ていられる祖父母は、ほとんどいないと思います。
やはり孫に対しては甘くなってしまうので、厳しく叱ってのを見れば「そんなキツい言い方をしなくても」と思うものなんです。
これは、孫が可愛くて仕方ないだけが理由ではありません。
親が子供を叱っている原因に対して、祖父母世代はさほど大きな問題とは感じないからです。
それは時代の変化も関係していますし、色んなことを経験してきたからかも知れません。
たとえば、私と親の間ではこんなやり取りをしたことがありました。
母親と祖母の実例
シングルマザーで息子を育てていた私は、実家の親に色んな面で助けてもらっていました。
ある時、息子に初めての自転車をプレゼントしてくれました。
補助輪付きの自転車に満面の笑みで乗る息子と、家の前の空き地で遊んでいました。
すると、自転車のベルをチリンチリンと鳴らし続けながら自転車に乗るのです。
初めてのものなので、珍しくて鳴らしたいのだろう・・としばらくは何も言わなかったのですが、ずっと鳴らし続けます。
さすがに私も「これは危ない時とかに鳴らすものだから、ずっと鳴らさないようにするんだよ」と言って聞かせます。
それでも息子はやめようとせず、ずっと鳴らし続けながら、ゆっくりと補助輪付きの自転車に乗って空き地をグルグル回っています。
静かな住宅街なので、ずっと音が響いているのも気になってしまい、「もうやめなさい」ときつい言い方をしました。
何度か繰り返してもやめないので、「じゃあ、今日はもう自転車もおしまいだから」と息子を降ろしました。
このやりとりを聞いていた私の母は、「別にベルを鳴らすくらいで叱ることないでしょ」と私に対して注意してきたのです。
私はムッとして「正しい使い方を教えないといけないでしょ」と反論してしまい、しばらく重苦しい空気になったのを記憶しています。
母としては、初めて乗ったのだから、気の済むまでやらせればそのうち鳴らさなくなるのに、ムキになってやめさせるために叱る必要はないという考え方です。
今になってみれば、母の言っていることも理解できます。
ですが、その時の私は「子供に正しいことを教えなければ」という気持ちが強く働いていたのです。
シングルマザーだから・・・と世間の人に思われたくないというのが、厳しくさせていたのかも知れません。
じつの親子でも、子供への接し方についてはモメることがあるのですから、嫁姑となれば表面では言わなくても、内心ではすごくモヤモヤしているのではないでしょうか。
厳し過ぎるのを自覚している親の気持ち
冒頭で触れたお悩みの件の母親は、2番目の子どもに対して、厳しくなってしまうのを自覚しています。
その理由は、上の子がしっかりしているので、つい比べてしまうこと。
そして、下の幼い子に手がかかるから、ついイライラしてしまう。
さらに、姑に甘やかされたくないから、つい厳しくしてしまう。
このような気持ちが混ざり合ってしまい、厳し過ぎる叱り方をしてしまうことに自分でも気が付いているのです。
兄弟姉妹で比較してしまうのは、ダメだと思いつつ、人間なので比べてしまうこともあるでしょう。
そういう時は、しっかり反省して同じことを繰り返さないように、自分が気を付けなければいけませんね。
しかし、幼い子供が下にいるからイライラするとか、姑が甘やかすのがイヤだからという理由は、自分に原因があります。
義父母と同居しているのに、子供に関してすべて自分だけで抱え込もうとしているから、キャパオーバーでイライラが破裂してしまうのではないでしょうか。
祖父母たちは、「もっと私たちを頼ってくれてもいいのに」という気持ちと、孫への深い愛情が重なってしまうのです。
それは、自分の子供を奪われたくないという本能からかも知れません。
親だから当たり前の感情ですが、一人で抱え込んでイッパイ×2になってしまうより、ずっと良いはずです。
親と祖父母の協力体制を話し合ってみる
子供にとって、親が一番なのは当たり前ですが、同居していたり、近くに住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんは、避難場所になることが多いですね。
親に叱られたり、親子喧嘩した時に祖父母のところに行ってなぐさめてもらった記憶のある方もいるでしょう。
大人たちが本音を見せないまま、腹の探り合いのようにしていると、子供も戸惑います。
孫がかわいそうとか、厳しく叱ってしまうのをやめたいと思っているのなら、子育てを一人で抱え込まないよう仕組みを作ってみると良いのでは。
姑たちに任せて息抜き時間を作る
つい厳しく叱ってしまう子が、兄弟姉妹の中で限定されているのなら、その子を祖父母に任せる時間を作ってみるといいと思います。
祖父母たちにとって、親から厳しく叱られる孫ほど可愛いのかも知れません。
母親も一人で抱え込まず、心に余裕を持つためにも、任せる時間を作ればお互いにとってメリットです。
叱り過ぎた時のフォローを引き受ける
核家族化が進み過ぎてしまったため、夫の両親と同居して2世代、3世代で暮らす家族が珍しくなっています。
それは子供によって「逃げる場所」を失う結果になりました。
親に厳しく叱られた時に、おじいちゃんやおばあちゃんに泣きつけないのです。
せっかく近くに祖父母がいてくれるのなら、協力をお願いした方が助かるはず。
母親がカッとなって叱ってしまった後に、祖父母が「ママがどうして怒ったのか、ちゃんと考えてみよう」と孫に落ち着いて話してくれるとすごく助かるでしょう。
悩みを素直に伝えられる関係性
育児の悩みは、実の親には話せても、義理の親には話し難いのではないでしょうか。
だから子供を任せることもできず、一人で苦しんでしまうのです。
また、孫に対して厳し過ぎる親への不満を抱えてしまう祖父母も、嫁には言い難いものです。
もしも嫁姑の関係が悪ければ、子供に余計なことを言いそうだから、怖くて近寄らせたくないのかも知れません。
そういう余計な大人同士の問題を解消できれば、子育ての先輩に育児の悩みを素直に相談できます。
親と祖父母が仲良くしているのを見れば、子供もきっと嬉しいはず。
もしも厳しく叱り過ぎてしまい「そんなに叱らなくても」と祖父母が孫をかばうようなことを言われた時こそ、悩みを素直に話せるチャンスだと思います。
まとめ
孫がかわいそうになるほど親から厳しく叱られているとしても、親から孫を奪い取るわけにはいきません。
なぜそれほどまでに厳しくするのか、親も祖父母たちに理解してもらう努力をして欲しいと思います。
分かり合えない部分もあると思いますが、子供に対する愛情と孫に対する愛情をぶつけあって争うことを避けるためにも、心の内を見せていかないと変われないのではないでしょうか。